2018年 03月 10日
投網を繰り返す漁師のように①~舘野泉さんの名言集
日本を代表する世界的なピアニスト
舘野泉さんの著書「生きる力」より。
以前のブログでも紹介したものです。
本日の高校生のレッスンで、
曲と向き合うことにあたり、相談を受け、
舘野泉さんの話も紹介し、私の経験も交えて、お話ししました。
曲と向き合ううえで、迷うこと・・悩むことも、非常に大切。
過程のひとつですね。
ただ、なにもしないでいるだけでは、ひらめきはやってきません。
ああこれでいいんだと思える瞬間まで、考え、悩み、迷い、
向き合ってみることも大切だと思います。
****************************************
舘野泉著「生きる力」より
~投網を繰り返す漁師のように
自分のやりたい音楽というものが、確固とした形があるわけではない。
でも、「つかみたいもの」があるというということだけは確かだ。
曲を弾くときに、何かイメージを持ったり、参考にしたり、
想像したりして弾くのですか?
と聞かれることがあるが、僕はそういうことはしない。
何の先入観ももたず、ただ楽譜とだけ向き合って、音を引き出す努力を続ける。
演奏家が音楽を探し出し、作り上げていく時、一番のキーとなる大切なことが、
この「音を引き出す」というテクニックだと思う。(略)
いろいろ弾いて、試して、触ってみて、
そうすると「あ、音が生きてきた」と感じる時がある。
そういう瞬間がある。自分で弾いていて、「ああ、この音、いいな」と感じる。(略)
しかし、そう簡単に「その瞬間」はやってこない。
待っていると、ある日ふっとやってくるものでもない。
だからこうした格闘は、今もずっと続いている。
なかなかつかめないが、曲の核心のようなものが見えてくる場合がある。
でもあくまで、「のようなもの」であって、
演奏するたびにいろいろな形で出てくるが、
そこから一気に真に「つかみたいもの」まで到達できるとは限らない。
何かの拍子に、それらしき部分がほぐれてきて、ああ、これでいいんだ、
と思える瞬間がくるのである。(略)
ここまで辿りつくのが本当に大変で、この工程が、
演奏家にとってもっとも重要なのではないだろうか。